小惑星「りゅうぐう」での探査を終え、無事に地球へ帰還した「はやぶさ2」が話題になっています。
帰還したとはいっても着地したのは回収カプセルだけで、2020年12月6日2:30頃、回収カプセルがオーストラリア南部の砂漠に着地しました。
この後、はやぶさ2はさらに拡張ミッション実行のため、次の目的地に向かいます。
「りゅうぐう」への到達を可能にした「スイングバイ」を利用した宇宙航法も話題になりましたが、この度のミッショでもスイングバイが使われます。
ここでは、はやぶさ2の次の目的地や、スイングバイについて調べてみました。
はやぶさ2の次の目的地は?
はやぶさ2の次の目的地は「1998 KY26」という小惑星です。
「りゅうぐう」の探査というミッション終了後もはやぶさ2を活用するための拡張ミッションが当初より検討されており、2020年9月、「1998 KY26」に決定されました。
追加ミッションについては、もちろん新たに打ち上げるより安いコストで次のミッションを実行できることが主な理由ですが、はやぶさ2はイオンエンジンの燃料がまだ半分ほど残っていることでこれが可能になりました。
その上で、電力事情や搭載した観測機器の能力に合わせて、地球に近く到達できる可能性の高い小惑星として「1998 KY26」が選ばれたとのことです。
はやぶさ2は、太陽の周りを10年半かけて約11周し、約100億kmという気の遠くなるような長旅の後、2031年7月に1998 KY26に接近し、探査を行う予定です。
「100億km先にある小惑星」という紹介の仕方をするテレビのニュース番組もありますが、太陽の周りを何周も回って軌道修正をしながら向かうので全行程が100億kmということで、目的の小惑星までの距離が100億kmあるわけではありません。
太陽系の一番外側にある海王星の太陽からの距離が45億kmなので、100億km先は太陽系の外に出てしまいますね。
1998 KY26とはどんな小惑星?
「1998 KY26」は太陽系の中でも非常に到達しやすい小惑星の一つとされています。
1998年に発見された直後には地球から約80万kmという近いところを通過しています。
「1998 KY26」の直径は約30メートルという大きさで、「りゅうぐう」の約900メートルと比べてもかなり小さく、太陽系の中で最も小さい天体です。
炭素が豊富で「りゅうぐう」と同タイプの小惑星と予想されていて、10.7分という非常に短い周期で自転しています。
また、その軌道が地球・火星間の輸送に最適なコースに近いことで注目されています。
水が豊富にあるということで、将来、火星への水の供給源として利用できる可能性もあるので研究の対象になっているといいます。
スイングバイをわかりやすく解説
はやぶさ2は「りゅうぐう」に向かう際に地球の引力を使って増速するスイングバイという航法を利用しています。
イオンエンジンを使って増速するのと違って燃料の消費が少なくてすむので、より遠くの天体に向けて探査船を送り出すことができます。
このスイングバイをわかりやすいように図で説明します。
点線がはやぶさ2の進路で、図の左から右へと進みます。
図の左から地球の引力の影響圏に入ったはやぶさ2は地球のそばをかすめるように通り抜け、地球の影響圏を脱出します。
地球の影響圏では、はやぶさ2は常に地球の引力に引っ張られています。
地球に近づく時は引っ張られて加速しますが、離れる時は進行方向とは逆に引っ張られるので、このままではせっかく加速した分だけ減速してしまいます。
ところが、地球は太陽の周りを公転しており、図の左から右方向に向かって進んでいます。
すると、地球のそばを通り抜ける時にその公転速度分もプラスされて加速するので、結果的に太陽に対する速度が上がることになります。
地球の公転速度は毎秒600kmなので、かなりの増速が期待できるわけですが、これがスイングバイで増速する原理です。
はやぶさ2のスイングバイ
「りゅうぐう」に向かう時、はやぶさ2はスイングバイによって、最接近時の地球に対する速度は約10.3km/sでしたが、太陽に対する速度は約30.3km/sから約31.9km/sに増速しました。
ちなみにイオンエンジンでこの増速を行うと1年ほどかかるとのことですから、これだとおそらく次のミッションは不可能だったことでしょう。
スイングバイは増速だけでなく軌道修正にも使われ、今回ミッションでは太陽の周りを10年半かけて約11周して、軌道修正と増速を行います。
2027年12月と2028年6月の2回、地球でスイングバイするほか、金星でも1回のスイングバイをして、目的地「1998 KY26」に向かいます。
前回の地球でのスイングバイの時(2015年12月3日)には3100kmぐらいまで地球に接近しましたが、今回のスイングバイ時にも地球からまた「はやぶさ2」の雄姿を見られるかもしれませんね。
まとめ
小惑星「りゅうぐう」での探査を終えて地球に帰還した「はやぶさ2」の回収カプセルは2020年12月6日にオーストラリア南部の砂漠に着地しました。
はやぶさ2はさらに拡張ミッションで小惑星「1998 KY26」の探査に向かいます。
前回のミッションで「りゅうぐう」に向かう時、「はやぶさ2」の地球接近時に「スイングバイ」という宇宙航法が話題になりましたが、今回のミッショでもスイングバイが2027年12月と2028年6月の2回行われます。
前回のミッションと同様、地球への接近時にはやぶさ2の姿が見られるかもしれません。